素敵な寄り道をして、新たな「キラリ」と出会う

「フランチェスカ レザーバッグ チェントロ」のはじまりは、社長の満田の要望がきっかけでした。 「トランクやボストンバッグのような大きいバッグに折りたたんでも入れられて、サブバッグにもメインバッグにもできるファスナーつきのバッグがほしい!」 少し贅沢かもしれませんね(笑)

「キラリ」と何かが光ること

こんな風にふと思いついた一言から商品開発がスタートすることがあるのですが、やはり基準といいますか、サロアルならではの「ブレない軸」、みたいなものがあります。いくつかあるのですが、その中の1つに『落ち着いているけれど、「キラリ」と何かが光るお洒落なバッグ』があります。 このテーマが目指す先は「あらゆるシーンやコーデに合わせやすいバッグ」なのですが、オンでもオフでも使いやすくするために落ち着いた印象を、同時に地味にならないように「キラリ」と光るアクセントを加えることを意味しています。 少し贅沢な一言(?)と、この軸に沿って「フランチェスカ レザーバッグ チェントロ」を制作していくことになりました。

ハンドルがあぶなかった

まずはボディにイタリアンソフトレザーを、そして、ハンドルをイタリアンクロコ型押しレザーで制作したファーストサンプルを制作しました。柔らかい素材なので折りたたんでも大丈夫。長いショルダーストラップもつけたので2WAY仕様です。 前者は優しい印象、後者は締まった印象のレザーなのですが、その組み合わせは思っていた以上に合っていて、みんなにも好評!幸先の良いスタートです。 ・・・と思っていたのですが・・・スタッフに実際に使ってみてもらうと、ボディに直接縫い込んで連結させたハンドルが悪さをすることがわかりました。ハンドルが中途半端に横に広がり、長いショルダーストラップを付けて斜め掛けとして使っているときに、何かにひっかる危険性があったのです。 「寄り道」のことは神様にしかわからないそこで解決策として頭をよぎったのが「Dカン」という金具です。この金具を付ければ、ハンドルをしっかり倒すことができ、大きいバッグにしまうときも便利です。 一方で見た目と構造のシンプルさを多少損ねることになるわけですが、できればレザーだけの「シンプル」さでまとめたかったというところが正直なところです。 ともあれ、再度サンプルを作ってもらい、じっくり眺めてみるとDカンが少し目立つせいなのか、デザイン全体のバランスが悪いように感じてしまって・・・もう一息、工夫を凝らす必要が出てきました。実はこの「もう一息の工夫」がデザインの最終系になるのですが、果たしてハンドルの問題で「寄り道」をしたから新しいデザインにたどり着いたのか、それとも、私の好きなミルクティーを飲んでいるだけでも、同じ様な結論だったのでしょうか。(笑) そう、神様にしかわからない。だからこそ自分にとって欠かせない「素敵な寄り道」であると、心に決めて、ポジティブに前に進んで行く姿勢がデザインに欠かせないと、そう感じています。

パイソン型押しレザーの実力

こうして「Dカンと全体のバランスの問題」と取り組みつつ、新たに感じたのが、冒頭でお話しした肝心の「キラリ」が足りないということでした。 そこで奥さんと一緒に考えているときに閃いたのが、「ボディにパイソン型押しレザーをライン状に加える」というアイデアです。この型押しレザーは蛇革の鱗の魅力と、キリッとした艶感を併せ持ったレザーで、色合いもシック。私たちが求める「落ち着いている」、そして「キラリ」を思った通りに加えてくれる素材でした。Dカンの煌きともバランスをとることができます。 その変更に合わせて、イタリアンクロコ型押しレザーのハンドルだと少しくどさが出るのではないか?ということでソフト、ラミナート系のレザーに変更することになりました。(これらのレザーでもDカンが必要でした。) さて、文中に登場した奥さん?ですが、その正体はニューズレター創刊号 バックナンバーにてご紹介しています。(笑)

お客様と一緒に新たな物語の一幕へ

このバッグは、少し贅沢な(?)一言から始まって、サロアルのみんなが私の「寄り道」を一緒に歩いてくれて、無事に完成させることができました。やっぱり、「みんなで創り上げたバッグ」というものは、その過程が感慨深く、同時にその中にデザインをより魅力的にする秘密があるのではないかと思います。 こうして「フランチェスカ トートバッグチェントロ」が完成すると、物語の1つの章が幕を降ろます。次の章ではお客様の豊かな人生と共に歩み、家族や親友のように欠かすことができないバッグになってくれるよう願ってやみません。一生に一度きりの素晴らしい想い出までも、共有できますように。 SALON DE ALFURD デザイナー 蛭川 飛鳥香